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里山をどうする⑧
ペレットにして利用する

田端英雄

里山林を十年前後の間隔で伐採する粗朶(そだ)利用や、炭を使う下水処理を提案するのも、利用することによって里山林を再生できるからである。同時に杉やヒノキを育てる「柱材の生産」に特化してしまった今の林業を見直して、もっと幅のある豊かな林業を取り戻そうという私の思いを込めた提案でもある。しかも、松林を除く里山林は、伐っても萌芽(切り株からでる芽)によって自然に再生する。伐った跡に植林しないと再生しない杉やヒノキの人工林とは、大きな違いがある。里山林が再生利用可能な資源である理由である。

マツタケ山の造成を提案するのも、マツタケ山からの収入は立派な林業収入であるからだ。しかし、これらは里山利用の序の口である。

炭や(まき)はエネルギー資源として使われていたのだから、昔と同じように里山林を使うには、里山林をエネルギー資源として使う道を探せばいい。それができるなら、異なった環境条件を持った林分がモザイクのように配置する里山林の構造を回復できると考えた。

そんな時に、私たちの里山研究会の会合で、「炭を燃料に使うのも、木材で発電するのも同じだ」と発言したのが島根大学の小池浩一郎さんだった。彼の話で芽から(うろこ)が取れた。

今、私たちは里山林に眠るエネルギー資源を使わずに荒廃させ、輸入したオイルを使って地球環境を汚している。ふつう家庭で使われている開放型の石油ストーブは、いわば排気ガスで暖房をしている。化石燃料の燃焼による二酸化炭素の環境負荷だけでなく、健康的な住環境を手に入れるためにも家庭の暖房を考え直す必要がある。

上石津町での私たちの調査資料によると、家庭で最も使用頻度の高いストーブの年間エネルギー使用量は、平均で約4000キロワットアワーであった。暖房器具をペレットストーブ(熱効率73.4%)に代えると、ペレットが年に約1トン必要で、ペレット代は約3万円になる。開放型ストーブの石油代を比べると、ペレットの方が約1.7倍高いが、ペレットストーブと同じように煙突付きのポット型ストーブ(熱効率73%)と比べると、1.2倍になる。1.2倍を高いと考えるか、安いと考えるか。住環境が改善される。ペレットを燃やせば二酸化炭素は出るが、林が再生する過程で吸収されるので、二酸化炭素の環境負荷はゼロになる。しかも里山林は使うことによって(よみがえ)る。

35年生のコナラ林が35ヘクタールあれば、120戸分のペレットを持続的に供給できる。製材廃材や林地に残される残材や間伐材も利用すれば、ペレットのコストを安くできる。一日も早く里山林を利用したペレット再生プラントを稼働させたい。

(岐阜新聞 2003年9月7日)