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里山をどうする⑨
ボイラーでペレットを使う

田端英雄

今年の夏、私は北欧三国を訪ねた。バイオエネルギーの国際学会に出席して最新の事情を勉強するのも目的の一つだったが、ペレットに関する調査が主な目的であった。

ペレットを家庭で暖房用の燃料として使うことについては先月ふれたが、ペレットの生産を始めるには大口の需要を確保したい。そこで、バーナーの部分を換えるだけで石油ボイラーをペレットボイラーに変えることを提案している。バーナーを交換するだけでボイラー本体はそのまま使えるので、簡単で安上がりである。公共施設や企業で多くのボイラーが使われているから、ペレットボイラーで安定した需要を確保しながら、家庭でのペレット使用を増やしていこうという考えである。この提案が間違っていないことを、文献やカタログでしか見ていないペレットバーナーの実物を見て確認したかった。

まず、SVEBIO(スウェーデンバイオエネルギー協会)にラゲルグレンさんを訪ねて、ペレット利用に関する最近の事情について話を聞いた。近年、石炭や石油のボイラーが多くペレットボイラーに変換されていて、昨年はペレットの需要が供給を上回り、価格の高騰が起きた。そこで、ペレット生産者協会と暖房ボイラー・バーナー協会とがペレットの需要予測のために協力を始めたという。ペレットの需要が多くなった背景には、エネルギー密度が高く、チップ使用と違って広いストックヤードがいらないだけでなく、タンク車で配達ができるようになり、今では石油と同じように扱いやすくなったことがある。スウェーデンでは、1992年に年5000トンであったペレット生産量が、2001年には66.7万トンになり、さらに不足分15万トンを輸入している。ペレット使用家庭の個数も現在の3万戸から3年で5万戸になると予測されている。フィンランドでも、石油使用の地域暖房会社が次々とペレット使用に移行している。

南スウェーデンのカルマルにある、ペレットバーナーのメーカーを訪ねた。バーナーを見るためである。ペレットのサイロと簡単なスクリューコンベヤーとコンパクトなバーナーがセットになっていて、ほとんどどんな石油ボイラーにも適用できるという。出力25キロワットと50キロワットのものが主力だが、大きな出力のものもできるという。これは日本でも使える。ペレット使用を中心に里山林の再生を考えることは間違っていないと確信して帰国した。

手を加えることで里山は(よみがえ)るのか、自分たちで確かめようと、上石津町では「里山大学」を始めた。放置された草生の草を一度(かま)で刈っただけで、センブリ、リンドウ、カキランが見事に甦った。里山再生の合意形成に向けても動き始めた。

(岐阜新聞 2003年10月5日)