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里山をどうする⑩
木材から電気を作る

田端英雄

多様にかつ合理的に里山林を利用する提案をしているのだが、北海道から沖縄まである里山林に当てはまる利用法といえば、利用されることなく眠っている膨大なエネルギー資源の利用を考えようという提案になる。そして里山林が利用されれば、結果として里山林が(よみがえ)るのだというシナリオを提案しているのである。

木材のエネルギーを利用する方法には、熱変換と液化などの化学的変換がある。化学的変換は化学工業の分野なので、ここでは熱変換について考えることにする。木材のエネルギーを使う前に、取り扱いや運搬をしやすくしたり、貯蔵場所を減らすなどの目的で、サイズを小さくしたり、圧縮したりする物理的な変換を行う。ペレットはこの物理的変換の一つである。

木材に熱を加えた時に十分な酸素があれば、木材は二酸化炭素と水になりエネルギーを放出する。これが燃焼である。ボイラーの燃料として木材を燃焼させ、スチームでタービンを回して発電をしたり、熱を製品の乾燥に使う2000キロワット程度の熱電併給システム(コジェネ)は製材所などで廃材を使って十年以上前から行われている。大規模なものは岐阜県では可児市にある名古屋パルプにある。現在製紙の過程で出る黒液、樹皮などのバイオマスを使って必要な電気の約80%を生産しているが、近々100%をバイオマスで生産する計画が進んでいる。

これに対して、酸素を遮断して木材に熱を加えると熱分解が起きて、木材は一酸化炭素と水素と炭素になる。この過程でできる炭素がいわゆる炭である。熱分解の他に不十分な酸素がある条件下で一酸化炭素と水素が発生する部分酸化、一酸化炭素、水素、メタンガスが発生するスチーム改質などの化学反応で木材がガス化される。一酸化炭素、水素、メタンガスが木材から作られる可燃ガスである。木酢液は熱分解の過程でできる有機物の産物である。終戦後、薪で自動車が走っていたのはこのガスを使っていた。木材をガス化してエンジンを動かし発電機につなげば発電することができる。しかし、木材供給の制約もあって、小規模分散化システムになるが、消費地の近くに設置できるので、大規模発電では捨てている熱を利用でき、エネルギー効率を飛躍的に向上させることができる。大規模発電では、エネルギー効率はほぼ40%であるが、バイオマス利用の小規模分散化システムの場合、発電効率は25%程度でも、熱を利用することによってエネルギー効率を80%程度にするのは難しくない。

これは、バイオマス利用の夢である。電力市場が自由化されれば、自由に価格設定してエコマーク付きの電力を売れるようになる。

(岐阜新聞 2003年11月2日)