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里山をどうする⑪
伐って使って守る

田端英雄

今まで書けなかったいくつかの問題についてもふれておこう。まず段丘や丘陵で暴れているモウソウチク林のことである。タケが建築材や造園資材として使われなくなり、タケノコも採らなくなったので、密度調節したり客土をする竹林の管理をやめてしまった。その結果、タケは地下茎を伸ばし周辺の林に侵入しだした。モウソウチクは一年で樹木の高さを超えるので、広葉樹の林は竹林に変わってしまう。暗い竹林に生活できる生き物は多くないので、竹林は実に単純な生物の社会である。その上、タケは何十年かに一度、一斉開花して一斉に枯れる。タケの新しい用途を開拓して竹林の拡大を阻止することが望ましい。破砕して利用する道が、今広がりつつある。

次は、里山の農業的自然のことである。放棄された田んぼの回復については、ナタネというエネルギー作物の栽培以外にはふれなかったが、里山の農業環境の回復にはいろんな知恵があるだろう。控えめな合鴨農法でコメ作りをする白川町の田んぼの畦に、キキョウやオミナエシやリンドウを以前に見つけて感激した。畦の管理に除草剤を使う農業も自然を荒廃させた原因の一つに違いない。

最後に、手を加えて里山の自然を回復させる、私たちの伐採調査の経験から分かり始めたことについて述べておこう。コナラ林を伐採した後、萌芽したアラカシの新芽にそれまで見かけなかったムラサキシジミが早速産卵にやってきた。また、県指定の保護区が設置されている希少種であるキリシマミドリシジミが、保護区外のアカガシの若い萌芽条に産卵した。伐採することによって生息域を拡大しているのだ。

草刈り5カ月後の草生には、無数のセンブリの実生が甦り、見事に花をつけた。何よりうれしいのは、これを見た隣の草生の所有者も草を刈ってくれるようになってきた。昔の里山林の明るい林床で花を咲かせていたカタクリやニリンソウのような春植物も、里山林の利用が進めば戻ってくるだろう。

ここで、簡単にまとめをしておこう。萌芽更新する里山林は、まさに再生利用可能な資源であるから、この資源の利用を通して、新しい社会を展望できるはずだ。新しい社会とは、再生利用可能な資源を使ってゴミを出さない、持続可能な社会である。里山林のバイオマス利用も、ゴミを出さない自然エネルギー利用の一つである。バイオマス利用のためには、地域自立型の経済の仕組みも必要である。こういったことを、肩ひじ張らずに生き生きと毎日の生活の中で実現したいものである。里山林の問題も、このような生活の一環として取り組みたい。そのための合意形成が今求められている。

(岐阜新聞 2003年12月7日)