さとやま

里山研究会ニュースレター
第1号
1992年7月10日発行

里山研究会ニュースレター「さとやま」の創刊について

このたび,里山研究会ニュースレター「さとやま」を発行することとなりました。この研究会は,里山についてさまざまな方面から研究していこうというものです。

今,なぜ里山か,ということについては,次の一文にうまくまとめられていますので,紹介しましょう。

かつて,薪をとり,柴をとり,炭をやき,山菜をとり,肥料をとりして,人々が利用してきた里山が,放置されたり,あるいは開発の波にさらされて,今,大きく姿を変えようとしています。雑木林あるいは里山林は,人為を加えることによって維持されてきたごく身近な自然ですが,近年利用価値を失い,二次林とか,代償植生とかいわれて,開発が容易に許可されています。しかし,一方で,里山の保護を求める声も大きくなっています。

里山の中でも,平野周辺の里山が,今集中的に破壊されています。しかし,平野周辺の更新統の地質,つまり氷河期に堆積した地層を持つ丘陵地帯や段丘に成立する里山は,その環境構造の複雑さにおいて特別な自然であることがわかってきました。礫層・砂礫層・砂層・粘土層からなる異なった環境条件が繰り返し現われ,粘土層の存在が,谷ごとにいくつもの溜池作りを可能にし,古くから谷深くまで水田耕作が行われてきました。溜池には,水生生物がすみ,何種類ものカモ類が飛来し,溜池の岸を利用してカワセミやヤマセミが生活している。粘土層の存在は,里山の谷だにに小規模な湿地を作り出し,山の斜面に水がしみ出すところを生みだした。

里山とは,林だけではなく,谷や湿地や水田や放棄田や小川や溜池をも含 めて考えるべきものでしょう。

そしてそう考えると,里山の生物相が,想像以上に豊かであることに気づきます。しかし,その里山が変わりつつあります。日本の植物の5種に1種が絶滅危急種であるといった,現在の日本の自然の荒廃も,里山の現状と無関係ではありません。

(今年3月,京大生態学研究センター主催でおこなわれたワークショップ「里山の現状」の案内状より)

このように,里山には,多様な自然がのこっていますが,しかし,研究の対象とされることは今まであまりありませんでした。里山の保全のためには,さまざまな面からの研究が必要です。このニュースレターを,そのための情報交換や議論の場として活用していただければさいわいです。

里山研究会について

里山研究会は,里山についての情報交換や議論をおこなう場としての連絡会のようなものです。当面,会費制はとりませんので,どなたでも自由に参加していただけます。参加あるいは協力いただけるかたはご連絡ください。


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「さとやま」では,みなさまからの投稿をおまちしております。意見・質問・おぼえがきなど何でもかまいません。

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                        伊東宏樹

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