シンポジウム: CO2ゼロエミッションのエネルギーシステム

— バイオマス熱電併給システムの可能性を探る —

昨年12月3日午後1時から5時まで京都大学理学部2号館でシンポジウムを開催した.その後,午後5時半から,地球温暖化防止京都会議(COP3)の開催と平行して開かれたNGOフォーラムの一つとして,このシンポジウムの市民向け公開講演会を京都市国際交流会館大ホールで開催した.里山研究会単独でスウェーデンからSVEBIOのLeckströmさんを招いて開催したもので,シンポジウムには全国から約120名,市民向け公開講演会には約150名の参加者があった.外国のNGOや代表団の人も少数ながら見かけられた.幸い,SVEBIO はたいへん好意的に協力してくれ,Leckströmさんの来日は往復の交通費のSVEBIO負担で実現した.SVEBIOに心から感謝したい.それぞれの講演の内容については,次号で紹介したい.

バイオマス発電に関する提案のその後の状況

里山研究会での討論は,まだ十分でないが,いろいろなところで里山研究会の提案は取り上げられるようになってきた.

「里山の自然」の韓国語訳出版計画

里山を研究しているソウル女子大学の洪さんから,「里山の自然」の韓国語訳出版の提案がありました.著者と出版社で,基本的には賛成する方向で検討しています.韓国ではオンドルに薪を使っていましたが,近年,薪からオイルに転換がすすんでいて,里山が放棄されるようになりました.日本の里山が当面している同じ問題が韓国でも深刻になってくるものと予想されます.しかし,今何らかの手を打つことが出きれば,日本のように問題を深刻化させずにすむかもしれません.その意味では,「里山の自然」が韓国語に翻訳されて,韓国の人たちに里山の重要性を訴えることができればうれしいことです.「里山の自然」に,その後の日本の新しい状況や韓国の里山に関する研究成果を増訂して,ソウル大学出版会から出版予定です.

スウェーデンにおける木質発電事情調査旅行

スウェーデンの木質燃料の利用に関する状況を調査するために,本研究会のメンバーを中心に8月18日から8月31日までスウェーデンに行って来ました.昨年COP3開催時に行ったシンポジウムと講演会を開催したことで,たいへん強力な支援を得ることができました.Rogert Leckströmさんにはたいへんお世話になりました.

SVEBIO,Sweden National Energy Administration,CHP(熱電併給)をおこなってArlanda 国際空港(ストックホルム国際空港)に電気を供給している Brista Power Station,南スウェーデンのVäxjö (ヴェクホ)にあるVäxjö Energy 会社,Växjöにある世界最大ともいわれる木材会社SÖRDA,木質燃料のガス化装置の研究製造のTPS Termiska Processer 会社,農地でヤナギを栽培し収穫して地域暖房を経営するFarmers Energy 会社などを訪ねました.何よりも印象深かったのは石油をやめて生物燃料で行くのだという意思を持っているかどうかでこうも事情が異なるものか,ということでした.

次号から少しずつ内容を紹介します.

カンパのお礼

次の方々からカンパをいただきました.厚くお礼申しあげます.

大住克博,池田重人,高橋和規,関剛,岡本透,杉田久志,糸屋吉彦,浅沼晟吾,由井正敏,阿部信之,浜田賢治,朝子哲夫,エコ・コミュニケーションセンター,瀬川也寸子,上田両四郎,清水妃文,足立幸男,維田幹,小池浩一郎,魚住侑司,千葉尚二,村田信,山村靖夫,鈴木美恵子,佐竹政則,平山健次郎,浦井巧,浅井健太,菅野知之,善方昭,井上裕司,佐伯敏郎,伊井野雄二,本宮町長

(順不同・敬称略)

編集後記

たいへん遅れたことをお詫びします.長い開店休業のような状況にしたのは,田端の責任です.テープおこしの分担をさぼったからです.

この間,岩波書店の雑誌「科学」98年8月号の巻頭言に「里山を守るとはどういうことか」を書きました.読んでみてください.

次号から少し木質発電などに関する資料などを掲載したいと思っています.乞うご期待.

(田端)