さとやま

里山研究会ニュースレター
第11号
1996年4月21日発行

目次


第3回里山研究会ワークショップ

「里山管理と炭焼き」

と き:5月11日〜12日
ところ:高槻森林観光センター
        5月11日13:00  高槻森林観光センター前集合
        宿泊は森林観光センター内の槻郷(つきのさと)荘(温泉があります)
        (電話 0726-88-9400) 費用は1泊2食付きで7800円

「里山管理と炭焼き」プログラム

5月11日

13:00-16:00
  「ふせ焼きで鑑賞炭を焼く」(24時間後に窯だし)
        バナナでもリンゴでも植物でも,何でもそのまま炭になります。何か
        鑑賞炭の材料を持参して参加してください。
  エクスカーション
  「都市近郊の里山」
    —高槻市森林組合は都市近郊の里山をどう考えているか—
        現場の里山を見学しながら都市近郊の里山をどうすればいいのかを討
        論します。高槻市の森林銀行制度や森林所有者との意見交換も交えて
18:00-22:00
  炭焼きに寄せる熱い思い—里山の管理技術としての炭焼き
    京都大学生態学研究センター  田端英雄
  炭焼きの新しい可能性を求めて
    島根大学生物資源学部     小池浩一郎
  大規模炭焼き窯の実現に向けて
  —森林組合による里山管理の模索
    高槻市森林組合理事      氏原 修
  鑑賞炭を焼く—ふせ焼きで炭を焼く木酢液をとる
    五所駒滝神社宮司       桜井 崇

5月12日

9:00-12:00
  小エクスカーションと高槻森林観光センターの事業見学
13:00
  鑑賞炭の窯だし

高槻森林観光センターへの行き方

JR高槻駅北口下車,西武百貨店前の2番バス乗り場から樫田方面「中畑・田能・杉生・仁科行」高槻市バス(森林観光センターへ行くかどうか確認してください)で森林観光センター前下車。西武百貨店前発 9:41 11:36 (所要時間約40分)

自動車の場合は,JR高槻駅のほぼ真北へ向かう府道枚方−亀岡線(ポンポン山の西側を走る)で出灰経由すぐ。高槻(171号線)から約25分。


報告:日本生態学会の自由集会「里山を考える」

3月28日から3月31日まで東京都立大学で行われた第43回日本生態学会で,自由集会「里山を考える」を開催した。第38回日本生態学会(奈良)で自由集会「今,里山を考える」を開いた。その時の開催主旨は,「里山が,開発によって破壊され,失われていることが指摘されるようになってから久しいが,里山の保護はどうあるべきなのか。里山を自然史の中に位置づけるとともに,里山と人々の生活との関わりにもふれながら,関西学術研究都市建設予定地と狭山丘陵におけるオオタカの保護,および保護運動をめぐる諸問題を提出し,里山の保護を考える」であった。今回は,「第38回大会の自由集会『今,里山を考える』では,里山が破壊され多くの生物が絶滅の危機にさらされている状況を報告し,里山の生物学的・生態学的特性を緊急に明らかにし,生態学の立場から里山をどうするのかに関する提案を行う必要性を訴えた。私たちも里山研究会を組織し,市民とともに研究会・講演会活動を行うとともに,京都府南部の京阪奈丘陵に調査地を設定し,足掛け3年余にわたって調査を行った。今回はこの間に得られた知見をふまえながら,これまでに明らかになった里山の自然の特性について報告し,里山研究・里山問題の今後の方向などについて議論を深めたい」というのが自由集会開催の主旨であった。

報告は以下のとおり。

佐久間は,今集中的に破壊が進んでいる更新統の堆積物からなる京都府南部の京阪奈丘陵における生物の生活が異なった性質を持った地層に規定されている様子を述べた後,植生データのクラスター分析から抽出した2つの植生型(アカマツ林とコナラ林にあたる)と環境要素との関係を主成分分析を行って検討した結果を報告した。さらに,ミズギボウシ,ナガボノシロワレモコウなどの絶滅危急種や冷温帯の植物が,粘土層と関連した放棄田や湧水が見られる特異なハビタットに生育することに関しても報告した。

小坂は,里山に生息するニホンイシガメとクサガメを比較しながら,ニホンイシガメが強く里山環境と結びついた生活をしていること,ニホンイシガメがクサガメよりも低い水温のところを好む傾向があること,行動範囲・行動様式が個体によって著しく異なることなどを報告した。

田端は,里山の植物相の特性に関して報告した。里山林を構成する木本植物や里山林に隣接する田圃の畦や里山林の林縁の草地に生育する草本植物がの分布域を調べてみると,同一種ないしはきわめて近縁な植物が朝鮮半島や中国東北部に分布していることが分かった。さらに韓国の里山林と日本の里山林の組成がきわめて類似していることなどから,日本の里山林や畦や林縁の草地,河原の草地の植生は,最終氷期に日本にあった森林や草地(氷期には日本にも自然草地があった)の変形したものであると推論した。つまり,田圃の畦や林縁の草地や河原の植生は,草刈や火入れや冠水による圧力に耐えて生きながらえた最終氷期の草原の生き残りだとすれば,中国にこれらが共存する草原があるはずであると考え,文献を調べると,ワレモコウ,キキョウ,リンドウ,シオン,クララ,ホタルブクロ,シラヤマギク,シデシャジン,カワラマツバ,カワラボウフウ,カワラサイコ,コケリンドウ,ヨモギ類,ソバナの仲間などが共存する草原が中国東北部にあった。つまり,これらの植物は正真正銘の草原性植物であるということである。しかも,近年これらの草原性の植物が絶滅に瀕していることになるから,これらの植物の生存には田圃の畦の草原的環境の維持が不可欠になる。どうしたら草原的環境を維持できるか。それには放棄田を水田として再利用する中で,畦の復元を図る必要があることを主張した。放棄田の再利用はクラインガルテンの手法を導入したいとも主張した。さらに,水生昆虫やニホンノウサギ,ニホンイシガメなどの生活の分析から,里山林に隣接する農耕環境を林と一緒に残さなければ林が残っても自然は死ぬことになるといった提案も行った。

討論の時間が不足であったが,行政に対する具体的な提案を行えるような研究を行えといった励ましをいただいた。里山の植物相の特性に関する報告に対しては,畦の位置づけを草地研究の中で見直したいといった意見や賛同の意見が寄せられた。何よりも,この集会を通してまた,多くの仲間が里山研究会に参加していただけたのはうれしいことであった。

(田端)


里山国際セミナーの報告書出版される

1994年12月9日〜11日に,京都府北桑田郡京北町の京都府立ゼミナールハウスで行われた第6回京都国際セミナー「里山とその自然の持続的利用」の講演集が京都ゼミナールハウスから出版されました(A5版192頁)。セミナーに出席された方で講演集の入手を希望される方は,京都ゼミナールハウスに連絡をとってください。出席者以外で入手希望の方は,本研究会に若干部数あります。1400円(カンパ1000円と送料400円)でおわけします。

京都府北桑田郡京北町下中 京都府立ゼミナールハウス 樋口様

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