全国に2000ヶ所に木質系発電所を 1

山下忠雄 (岡山県真庭木材組合)

— 山下さんは10年ほど前から木質系ミニ火力発電の必要性を訴えてこられましたが,なぜミニ木質系発電は必要なのでしょう.

山下:日本の山林はとくに戦後人工造林が非常に増えて,その除間伐が問題になっている.しかし,除間伐材は材木としては利用価値が低い.お金にならないから除間伐しない.放置すると山の作業ができなくなる.それをお金にしようとすれば,何か利用を考えなくてはならない.それにはどんな形態のものでも,樹種を問わずに利用できるのは燃料として以外にはない.それには木材を利用するミニ火力発電所を建設して,それによって全国の山林を美しく守っていくいうことを考えて提唱したのですが,なかなか一般のみなさんの理解を得られなかった.

— 要するに木材を有効利用することですか.

山下:木材の有効利用が一つ.もう一つは,木材を利用することによって自然の山の形態が守られる.人工林では一定の面積にたくさんの木が植えてある.そして大きくなるに従って木の数を減らしてやらないといけない.自然林は自然の力で更新して行くが,人間が植えた木は人間の力で間引いていって,陽が地表に差し込むようにしてやらねばならない.日本の1000万ヘクタールの山林の何割かは,陽が射し込まない,表土が貧弱な状況になっている.そういう状況になると表土が流されて石がらになってしまう.こうなると自然災害から山を守ることもできない.天気が続けば山はからからになり,雨が降れば水をもろに下流に流す.このまま日本の山林を放置しておくと,日本の国土は大変な水不足と大変な水害にみまわれ,国土が崩壊する.木材の価値を見いだし,水資源を確保し,自然の山を守るには,火力発電しかないと考えてきた.

— 木質発電には多くのメリットがあるということですが,どうして全国に2000ヶ所もの木質系のミニ発電所をつくろうと考えられたのでしょうか.

山下:全国に3千いくつかの市町村があり,そのうちの2/3位にミニ発電所をつくる必要があると思う.ミニ発電所でスギだけでなく広葉樹林も除間伐して利用すれば,残された林はすばらしくなると思う.木曽のヒノキ,サワラ,コウヤマキなど五木以外は伐って薪にしていいというので,伐ったのですばらしい木曽の天然林ができた.今松山が松食い虫で痛んでいますが,被害木を伐り燃料にでもしていい木を残しておけばこれぼど松食い虫の被害も広がらなかっただろうと思います.全国の山のある市町村にはミニ火力発電をつくってほしいというのが私の考えです.2000kWhの発電所を2000ヶ所なら400万kWhの発電が可能で,原子力発電所4ヶ所に相当する大きな電気を供給できるというので国策上も大変有益ではないかと思う.

— 木材を燃やすということになると,灰はどうするのだろうかという疑問が生じると思いますが.

山下:灰の問題は一番大切な問題です.久世町の木材協同組合が昭和48年から日誌を残してある.毎日平均25トン焼いているが,しかしこの灰は捨てたことがない.全部買い取っていただいている.木灰だからいろんな用途がある.中国で工業が発達して日本に酸性雨が降る.これに対処するには木灰しかないと思う.木質系の発電所から出る灰は,農地の肥料にもなるし,土壌の酸性化を中和する作用もある.山などに酸性雨の被害が出ればヘリコプターででも灰をまいてもらう.道のあるところは人間の力で灰を持っていくといったことをすればいい.また灰は肥料にもなって山の木がりっぱに育つ.一石二鳥である.集塵機をつければよいので,発電所の煙は問題ないと思う.

— 日本は木材を輸入しているのに,日本の木を燃やすというのかという意見も出てくると思いますが,いかがですか.

山下:現在日本で消費している木材は1億1000万m3ですが,日本の森林の年間生長量が人工林で約7000万m3,広葉樹林を加えれば約1億m3年間に自然生長しています.しかし国産材として伐られているのは約2000万m3程度です.つまり,日本の山の蓄積は増えているという状況です.将来,国産材の生産が倍になっても,間伐など山の管理が十分できれば相当大きな自然生長量が見込めるということで,外国からの輸入が減っても発電で燃やすことで山の木はどんどん生長していくことになります.ちょっと理解しにくいことかもしれませんが.

— はい,よくわかりました.どうかこの発電所の実現を目指してご尽力いただきたいと思います.


1 山下さんは当日所用のため出席できませんでしたので,あらかじめインタビューを録音しておいていただきました.なお,インタビューと録音には岡山県久世町長のお世話で,同町の有線放送にご協力いただきました.



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