愛知万博開催予定地を歩く

愛知教育大の地理学研究室の森山昭雄さんから,「里山の自然」を読んで同感したので一緒に予定地を歩いてほしいという要請を受けました. 以前にも本会会員の愛知県緑地工事工業協同組合の堀田さん他数名,地元の方数名と予定地を歩きましたが,今回は独自の調査を続けてそれに基づく提案などを精力的にしている方々と一緒に歩けるというので,現地を歩き現地で討論をしてきました.

典型的な里山だったところで,若干ではあるがまだ田圃も残っている.地形地質と植生,とくに花崗岩の地域とそれと隣接する更新統の堆積層の地域とで植生がその間にある断層を境にしてはっきりと違っている.

人間活動との関連でも,須恵器の窯跡があったりして興味深い. 林の中を歩いているだけで,過去の自然と人間活動との関係がいろいろ見えてくるという点では,私たちのフィールドである京阪奈丘陵に似ている. 日本中,どこでもこういった地形のところには,似た遺跡や人と自然の関わり方を示す跡がある.

愛知万博を里山をテーマに開催するといった橋本首相談話を新聞で読んだ時から,気にはなっていた. 金沢大学の植田さんがいうところの東海丘陵要素,中でもシデコブシの生育地を見ておきたいと思って一度現地を歩いたが,万博を推進している人たちが何を考えているか,反対する人たちが何を考えているか,が見えてこなかった. ちなみに愛知万博のテーマは,「新しい地球の創造:自然の叡知 = Beyond the Development: Rediscovering Nature's Wisdom 」である. 未だに,具体的な姿が見えてこない. はっきりしているのは,「万博会場」跡地の「新住宅市街地開発事業」,高速道路「名古屋瀬戸道路」建設といった従来型の開発計画である. 何が「自然の叡知」なのかが見えてこない. その間,オオタカが営巣していることが発見されて若干の修正がなされたものの,依然として愛知県当局だけが全面にでているだけで,いったいどこで何が決められてどうなっているかがはっきりしないまま,見切り発車の時が迫ってくるという状況であった.

その中で,前環境庁長官などが提案した里山公園構想だけが対案として出されている. 公園で里山の自然が保全されるのかどうか.里山をどのように考えているのかが,ここで問題にされる必要があろう. 現段階では,現在愛知県当局が進めている万博を阻止するということではなく,何らかの対案を提出する以外にない時期に来ているという判断が万博反対を主張している人たちの間にあるようである.

そこで,今,「海上の森を国営里山公園に!」と言う呼びかけが,(財)日本野鳥の会会長黒田長久,(財)世界自然保護基金日本委員会会長大内照之,(財)日本自然保護協会会長沼田真,元環境庁長官岩垂寿喜男の連名で出されようとしている.

運動を進めているのは,国営瀬戸海上の森里山公園をすすめる連絡会(代表世話人馬宮孝好)である.関心のある人は, e-mail: mamiya@phys.nagoya-u.ac.jp にアクセスしてみてはどうだろう. さらに,今までの経過は, e-mail: moriakio@sinfonia.or.jp にアクセスしてみるといい.

(田端)