<文献紹介>

ヨーロッパにおけるエネルギーのための森林残渣の潜在的利用可能性

(部分抄訳)

P。ハッキラ(VTTエネルギー,フィンランド)
M。パリッカ(スウェーデン農業科学大学,スウェーデン)

産業界において、スウェーデンは森林残渣からのエネルギー生産の先駆者となってきた。スウェーデンのエネルギー政策は、再生可能な資源からのエネルギー生産を優先している。スウェーデンでの理論上の木質燃料は、2700万t/年、エネルギーにして126TWh/年と見積もられているが、生態学的あるいは技術的な制約を適用した場合、可能な供給量はエネルギーにして91TWh/年まで減少する。中期的に見て、このうち約75TWhが、1990年代後期の技術を用いることによって、MWh当たり平均115SEK (10–11ドル)で利用できるだろう。

林業からの主な燃料資源としては、次の2つが考えられる。1つは森林伐採後残されるすべての地上部バイオマスと定義される林地残材と市場には出せない若い森林の間伐材である。もう1つは、間伐されるべきなのに工業原料としての小径材に対する需要がなかったために放置されている林分である。その中には、種やサイズ、質の低さから市場ではねられた樹木も含まれる。

間伐を繰り返してきた、管理された森林では、最終的な伐採において、枯死したものや傷物、あるいは小さい樹木がほとんどない。

ヨーロッパでは、高度に利用されるので産業残渣からのエネルギー生産を増やすのは期待できない。そこで、再生可能なエネルギーの新しいバイオマス資源として、エネルギー作物や林業における森林残渣が注目されている。

ヨーロッパ委員会白書「社会戦略と行動計画」は、有効な政治的施策が行われることを前提に2010年までにエネルギーのためのバイオマス生産を現在の3倍にすることを考えている。年間のバイオマス燃料の使用は、現在の45Mtoeから135Mtoeまで伸び、それは、EUで2010年に計画されているエネルギー消費の8.5%に相当する。

おもにドイツ、フランス、スウェーデン、フィンランドでの、年間伐採からの地上部残材は24Mtoeと見積もられる。生態学的、技術的、あるいは経済的な障害から回復が妨げられるために、この潜在的な地上部残材すべてが利用されていない。さらに、需要と供給が地理的に常に一致するとは限らないことである。理論的な潜在量の1/3の量で、8Mtoeの化石燃料を代替するに十分で、オイルを代替するなら結果的に2400万tの二酸化炭素の排出が削減される。石炭を代替するのであれば、毎年3000万tの二酸化炭素の排出が削減される。この削減は、EU諸国の発電からの二酸化炭素の総排出量の2–3%になるだろう。

2000年には、EU諸国における幹材の増加量が4億6400万m3と見積もられている。その1/4が林産工業に必要でないため林地に残って成長する。この余剰の増加分の低質部分を燃料として使うことによって、若い森林の管理を改善することができるとともに、化石燃料を代替することによってヨーロッパにおける二酸化炭素の排出をさらに2-3%減らすことができる。

京都議定書でのEUの数値目標は、2008–2012年までに温室効果ガスを1990年のレベルから8%削減することであるから、EUにおける発電による二酸化炭素排出の削減のための林業の未使用燃料の潜在的寄与(4-6%)は、かなり興味深い。

(J. リチャードソンら編(2003)「持続的林業からのバイオエネルギー」(Kluwer Academic Publishers)から加藤佐和子抄訳)

地球規模での二酸化炭素の純排出におけるバイオエネルギーと
それに関連した土地利用の役割(抄訳)

B. シュラマディンガー(ヨーネウム研究所,オーストリア)
G. マーランド(オークリッジ国立研究所,アメリカ)

1. 概要

II. 序説

検討課題1: バイオ燃料の供給量

検討課題2: バイオ燃料によるCO2排出削減量

III. 結論

(ペルネコンら編 (2000) エネルギー資源としての木質バイオマス—ヨーロッパの挑戦—. ヨーロッパ森林研究所. から小川竜男抄訳)